目的語

この記事では、目的語について解説します。次の例を見て下さい。太字になっている語が目的語です。

(1)My father bought a new car.(私の父は新しい車を買った。)
(2)John can speak French fluently.(ジョンは流暢にフランス語を話せる)

(1)はForest (2)は安藤(2005)より

動詞には、自動詞と他動詞の2種類があると聞いたことがあると思います。このうちの他動詞は文を作る際に動作の及ぶ対象を表す語(ないし句あるいは節)を必要とします。この語を目的語と呼びます。(このような対象を必要としないのが自動詞です。)

1点注意したいのは、この「動作の及ぶ対象」というのはあくまで典型的な他動詞文において成り立つ説明だと言うことです。例えば次の例を見て下さい。

(3)Hilda resembles Marsha.(ヒルダはマーシャルに似ている.)
(4)Line A intersects line B.(線Aは線Bに交差している.)

Langacker(1990)の例文を河上(1996)より引用

この文で用いられているresemble/intersectという動詞は他動詞ですが、「似る」という行為の対象、なんていうとちょっと変ですし、「交差している」というのは行為なのか?と言われると微妙な感じがしますね。このような目的語については「動作の対象」よりももっとよい説明があります。それは「動詞の表す事態の中で2番目に際立つモノ」という説明です。つまり、(1)/(2)のような他動詞文らしい他動詞文における目的語は「動作の及ぶ対象」という説明がピッタリ、一方(3)/(4)のような例も含めて、どのような他動詞文の目的語でも通用する説明をするなら「動詞の表す事態の中で2番目に際立つモノ」という説明が相応しい、ということです。間接目的語や節を目的語とする場合についてはまたの機会に解説しようと思います。そのうち自動詞と他動詞についても解説しますね。

まとめ
・目的語とは他動詞文における動作の及ぶ対象を表す語である。
・他動詞には、私たちが他動詞と言われてすぐに思いつく”他動詞らしい他動詞”と「あぁ、言われてみれば他動詞だな」と気付くような”他動詞らしくない他動詞”がある。
・他動詞文らしくない他動詞文における目的語も視野に入れるなら「動詞の表す事態の中で2番目に際立つモノ」と考えた方がよい。

今回参考にした文献
安藤貞雄(2005)『現代英文法抗議』開拓社
石黒昭博 監修(2013)『総合英語 Forest 7thEDITION』桐原書店
河上誓作(編著)(1996)『認知言語学の基礎』研究社出版

河上(1996)から引用した例文の出典
Langacker,Ronald W.(1990)”Settings, Participants, and Grammatical Relations.” In Savas L.Tsohatzidis, ed., Meanings and Prototypes: Studies in Linguistic Categorization, 213~238.London:Routledge.

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