英語の感覚・日本語の感覚 感想と紹介

 この記事では池上嘉彦(2006)『英語の感覚・日本語の感覚』日本放送出版協会の紹介をします。気になった方は是非ご一読下さい。

 池上嘉彦さんは『「する」と「なる」の言語学』や『記号論への招待』などでも知られている先生ですね。どちらも拝読したことがありますが、とても面白く勉強になるのでこちらもオススメです。

 さて、今回紹介する『英語の感覚・日本語の感覚』では、日英語の言葉の意味を中心としながら、文法との関わり、コンテクスト(文脈)との関わり、言語の歴史的変化、言語の普遍性と相対性、芸術との関わりなど様々な話題に触れています。専門書というよりは一般向けに書かれた本なので、言語学や英語学の勉強をされていないという方でも楽しめる文体だと思います。

 少しだけ内容を紹介しておきます。川端康成の小説『雪国』の冒頭とその英訳を比べて見てみましょう。


a.国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。
b.The train come out of the long tunnel into the snow country.(直訳:列車が長いトンネルから雪国へと出てきた。)

池上嘉彦(2006)『英語の感覚・日本語の感覚』より

 英訳の方を見るとなんというか、臨場感がありませんよね。列車の上から見ているような印象を受けます。それに対して日本語では暗いトンネルの中を抜けると、ぱっと明るくなって辺り一面の雪、という感じでその場にいるような情景描写です。どうして、このような言い回しの差が生まれるのでしょうか。この差は日本語と英語の事態把握の仕方の差に由来しています。私たちは対峙する状況の全てを言葉にすることはできません。そこで、どの要素を取り上げて言語化するのかを選択する必要があります。このような心的な働きを事態把握と言います。事態把握は言語ごとに癖があり、その癖が上記のような差を生んでいるのです。「果たしてそれはどのような癖なのか?」気になった方は是非読んでみて下さい。

 最後まで読んで下さりありがとうございました。 

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